2016年01月

 「好きから逃げない」。僕の大好きな言葉です。

 この言葉は『図書館戦争 革命のつばさ』というアニメ映画のキャッチコピーというか、キーワードなのですが、僕は元々この原作と原作者の有川浩さんが大好きでして、この言葉が強く心を射抜いたのです。

 去年の夏コミで頒布したアニメ評論誌『PRANK! Vol.1』ですが、これもこの言葉を実行した結果でした。自分の「好き」に他の人を巻き込んで一冊作るという悪ふざけを実行しているのが本シリーズだったりします。なので言ってしまえばノイタミナ特集も電撃文庫特集も今度のW水島監督特集も、すべて僕の「好き」に他の人を巻き込んで制作するものです。テーマは「好きから逃げない」。ここまで来ると潔いのかもしれません(笑)。

 この考えかたがまたふと頭の中に浮かんだのは、今日発売された有川浩さんのエッセイ集『倒れるときは前のめり』(KADOKAWA 角川書店)を読んでいたからです。ちなみに左手首を捻挫しまして、痛みの中で読んでおりました。身体的にも精神的にも弱ったときにはエッセイ集と笑えるライトノベルが僕の特効薬です。で、そんな本を読んでいたわけですが、僕が純粋に「好き」を追っていた時代のことを思い出すわけです。

 そういえば、あの頃は純粋にどんな本でも読んでたっけ……。

 僕の今を作り上げたのは間違いなく中学時代の読書経験なんですが、あの頃は雑食的に図書室にある本はジャンルを気にせず読み、古本屋で興味のあるタイトルをチョイスし、新刊書店で大好きな作家を追う、ということをしていました。

 高校時代になって読書ペースが落ち、今では云わずもがな。その過程でいつしか「俺TUEEEは読まない」とか「評論ムツカシイ」とか思っちゃうようになってたんですね。

 中学時代の僕が、今の自分を見たらどう思うのか? 本当に恥ずかしい限りです。

 そんな考えを抱き、直近に控えているものに「好き」を詰め込めばいいのだ……! という考えに至っちゃうあたり毒されている。昔、自衛隊三部作に憧れた結果が『星降る世界で』という小説になるわけですが、今読むと恥ずかしいよな、アレ。

 今日、当落発表になりましたサンシャインクリエイション2016 Winterに僕と半座さんの共同サークル・coccon softwareが当選いたしまして、M-12aに配置されました。当日には半座さんの既刊改訂版である『冴えない出会いの進めかた Re-order』(僕は編集担当です)と、新刊『冴えない旋律の奏でかた』、あと『PRANK!』を持っていくつもりです。新刊は前述のとおり、「好き」を詰め込んだものにする予定です。

 あと、「小説家になろう」の方でちゃんとした連載としては4年振りとなる異世界ファンタジーもの『幼なじみさん、剣1本で天下統一とかムリゲーなんですけど。』を連載開始しました。突発的なんですけど、アカナギ・カナタの冒険譚をよろしくお願いします。まぁ、僕の好きなファンタジーってアレとかソレですから、あんな感じに仕上がるんだと思います。書籍化目指して荒野を突っ走っていこう(無謀)。

 まぁ、そんな感じで書評&近況報告&宣伝。たまには息抜きブログ書かなきゃ死ぬわ……。

倒れるときは前のめり

倒れるときは前のめり

脚本:上江洲誠  絵コンテ:金崎貴臣  演出:吉田俊司  作画監督:北村友幸、鵜池一馬

原作:〜第1巻40頁相当

 ブログを更新するのが、まさか『ハルチカ』ではなく『このすば』だと誰が予想しただろうか……。

 僕が『このすば』と出会ったのは昨年12月と浅すぎるにも程があるのですが、原作ファンの方より布教を受けて読み始めたらその面白いこと。『このすば』の原作は角川スニーカー文庫から出ておりますが、初出は「小説家になろう」。いわゆる俺TUEEE系の異世界ファンタジーもの、というテンプレなのかなとちょっと敬遠していた節もありました。ただ、最近の異世界ファンタジーものには変化球も多く、本作はそちら側――冒険よりギャグが主体のファンタジー。その面白さに気づいてからは不思議と原作続刊に手が……仕方ないよね。うん、仕方ないよね。

 そんな『このすば』をアニメ化したのは金崎貴臣監督と上江洲誠さんのコンビ。『これがゾンビですか?』の印象も強いお二人ですが――そういえば『これゾン』もギャグラノベの傑作でしたね――本作の主題と方向性が見事に合致していた第1話を作ってくださいました。

 さてようやく本題。第1話のお話です。以下、ネタバレアリ(若干原作も)。

 トラクターに引かれたと思ってショック死してしまったサトウカズマが、女神・アクアと出会うという展開からスタートした第1話。この入りってすごく『これゾン』っぽいですね。アクアは最初こそ女神然としているわけですが、彼女だって自律意思のある存在なのでニートたるカズマと同じくらい怠惰だったりするわけで。自分がアクシズ教で崇められている存在ということで、「崇められている私スゲェ」になってるわけですね。この高飛車アクアちゃんかわいすぎません!? あ、僕はエリス教徒なので……石投げないで、ダクネスじゃないから!

 そしてカズマは唯一持って行けるものとしてアクアを指名します。この泣き崩れるカットがぬるぬる動いていて、可憐なアクアがここまで泣き崩れるのを表現できるのは凄い、と感心しながら観ておりました。というか、この死後の空間でのカット、非常に面白い造りになってるな、と感じたので是非目を凝らしてご覧ください。

 アクアとカズマが異世界に辿り着き、最初の街・アクセルに降り立ちます。RPGによくありがちな最初の街、ですが今作は劇伴が『モンスターハンター』などのゲーム音楽出身の甲田雅人さんということで(上江洲さんとは『蒼き鋼のアルペジオ アルス・ノヴァ』で一緒になっていますね)ゲームミュージック的要素が混ぜ込まれたものになっています。だからか自然とRPGの導入のように感じられて、ストレスフリーで観ていられるんですよね。アイキャッチ部分も一時STOPで演出するのはもともとゲーム少年だった自分としても嬉しいものです。ちょっと吹いた。

 さて、アクセルの街に着いた二人ですが一文無しですし、ニートと女神では何もできないわけで。どんな世界でも世知辛く、二人は汗水垂らして肉体労働でお金を稼いでゆきます。今の時代、冒険者もお金が必要なんですよね……で、このままスローライフものになるのか、というところでカズマが目的に気づくという第1話のオチへ。

 ということで、関東勢から「お前、まだ観てないの? プークスクス」と言われ続けていた『このすば』ですが、控えめに言っても面白いですよ! これから新キャラクターも登場し加速するセカイを是非お楽しみください!

この素晴らしい世界に祝福を!     あぁ、駄女神さま (角川スニーカー文庫)

この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま (角川スニーカー文庫)

 あけましておめでとうございます。羽海野渉です。冬コミでは1日目に自分のサークルで、3日目に委託という形で『PRANK! Vol.2 電撃文庫評論集』を頒布させて頂きました。ありがたいことにお手に取って下さる方も多く、感謝感涙です。『冴えない絵師の倒しかた intoroductory chapter』も頒布させていただきましたが、ある方からは「はよ書け」という声を頂いたり、ある出来事によるプレッシャーもありますので夏コミでは必ず「closing chapter」を用意しておきます。

 さて、12月初めにツイートしたとおり、2016年8月開催のコミックマーケット90では『PRANK! Vol.3 Side-A 水島努作品評論集』『PRANK! Vol.3 Side-B 水島精二作品評論集』を同時刊行致します。分冊です。『Vol.2』のラストにもあったとおり、編集中(11月)には決定していた特集ですが、運良く両監督の新作が4月期に放送というタイミングでの刊行となります。是非、ご寄稿をお願いいたします!

 

『PRANK! Vol.3 水島努水島精二評論集』原稿募集要項

編集長:羽海野渉

 ノイタミナ電撃文庫を特集し、次は何にしよう、とVol.2の編集中に考えていました。『冴えカノ』? 『ハルチカ』? さまざまな作品やレーベル、声優の名前が飛び交いましたが、二人の人物名でその会議は終結します。それが水島努水島精二両監督でした。

 編集中、まさしく『ガールズ&パンツァー 劇場版』が公開し(公開初日に近所で、二回目は立川で観ました)、『コンクリート・レボルティオ ~超人幻想~』が放送中の時期。どちらの作品にも滾っていた僕はこの特集をすることに決めました。

 また、『コンレボ』は話のペースから分割2クールだろう、とか、努監督なら来年4月に新作やるよね、と考えていたのも事実です。そんな中、2クール目や『迷家』が発表されたのは予想以上の現実でした。

 さて、そんな特集ですが本気で取り組みます。是非、ご寄稿を!

 

副編集長:群馬仁

 水島努監督は『撲殺天使ドクロちゃん』『よんでますよ、アザゼルさん。』等のブラックコメディ路線と、『ガールズ&パンツァー』『SHIROBAKO』等の細部まで行き届いたエンタメタッチな作品を両立させてきました。

 また水島精二監督は『鋼の錬金術師』『機動戦士ガンダムOO』『UN-GO』等で重厚な生死観や国家・政治観を描いたり、『夏色キセキ』『アイカツ!』等で女の子の一瞬の輝きのようなものを描き、観るものを魅了してきました。

 『SHIROBAKO』のコメンタリーにもあるように、決して多数派ではない同じ苗字のアニメ監督が同世代に、違う作家性をもって存在していることが奇跡に近いのです。

 努監督は『ガールズ&パンツァー 劇場版』でエンタメの集大成の一つを見せ、精二監督は『コンクリート・レボルティオ ~超人幻想~』で久しぶりに本格的に過去/現在/未来が入り組む政治・国家観を描いているいま、あえて違う作風の二人を取り上げるのが好機だと思えたのです。

  • 内容:水島努水島精二両氏が監督した作品を起点とした評論・エッセイの原稿。

(例)

ガールズ&パンツァー』→もちろんOK。

鋼の錬金術師 FA』→2003年版が起点ならOK。

アイカツ!』『BLAZBLUE ALTER MEMORY』→水島精二氏がスーパーバイザー・監督協力なので例外的にOK。

クレヨンしんちゃん』→水島努作品に触れていればOK。

  • 装丁:A5サイズ、上下2段組(本文2段+脚注欄)
  • 文字数:3500文字以上、上限ナシ。自己紹介は150文字以上、上限ナシ。
  • 原稿〆切:5月29日(日曜日)。ただし、『コンクリート・レボルティオ ~超人幻想~』『迷家』に関する原稿に関しては7月10日(日曜日)。
  • 編集長:羽海野渉
  • 副編集長:群馬仁
  • 送り先:羽海野渉 voising_anotherlife@yahoo.co.jp または群馬仁 gunmajin_
  • puff@yahoo.co.jp
  • 献本:1冊になります。掲載料は申し訳ありませんがありません。
  • 校正:編集側で行い、内容・漢字の加筆修正などをメール返送やSkypeでの形でさせていただきます。また、脚注も使用して頂いて構いません。ですます調は統一で、できるだけ平坦に分かりやすく、数える(第1話や2人など)場合の数字は半角数字で、それ以外は漢数字でお願いします。
  • 形式:Wordファイルまたはテキストファイル。
  • その他:参加希望がありましたら前もって作品タイトルとその旨をメールかTwitterのリプライ、DMを@WataruUminoまでくださると幸いです。

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