カテゴリ: ドラマ
2014年12月に観た映画・OVAの記録
中村光による原作漫画の雰囲気そのままに、僕はブッダ役の星野源さんのファンなので主題歌「ギャグ」含めて期待していたんですが流石は俳優、キャラクターがまさに動いていき、劇場映画クオリティで表現された立川市とイエスとブッダはそこにいるとしか形容できない出来でした。
高雄監督は元々京都アニメーションの出身なので共同で絵コンテを担当した『涼宮ハルヒの消失』の構図と似た場所もあり、退社後に山田尚子監督が作られた『たまこラブストーリー』との相似性も感じられました。しかし、『たまこ』の一連の作品とは同じく街を切り取る物語にはなっているものの、女の子同士と聖人同士の違いでここまで変わるのだなぁ、と。『THE IDOLM@STER』でシリーズ演出を担当されていたこともあり、第24話に代表されるシリアスな展開を得意とする高雄監督ですが、ギャグもいとも簡単に描くかのような技量には脱帽です。
放送中の『アイドルマスター シンデレラガールズ』の監督も高雄監督は務められるので、期待していたいと思います*1。しかし、森山未來さんのイエスは違和感が無かったですし、「ギャグ」は星野源楽曲で一二を争う名曲ですな……
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②舛成孝二監督『宇宙ショーへようこそ』(2010)
農村に暮らす数人の小学生が宇宙人と出会い、廃止になった修学旅行へと宇宙へ旅立つ、という土台から伏線の数々を経て宇宙ショーという大舞台に着地させる圧巻のストーリー。非常によくできたジュブナイルSFで、細田守作品のようにたわいもない日常と掛け替えのない非日常を共存させて描き出すことが出来る人がここにもいた、という一言に尽きる。
舛成監督作品は『マギ』『R.O.D』しか観ていなかったことを後悔させられるが、倉田英之脚本・石浜真史キャラクターデザインによるチームとしては『R.O.D』のぶっ飛んだ設定を見応えあるものにしてきた前例があり、今作もぶっ飛んだ設定ながら地に足ついた話に仕上がっている。また、ヒーローものとしての側面もあり、同じく倉田脚本による『サムライフラメンコ』に通づるものがあった。ヒーローは信じる心。主演の黒沢ともよも同い年ながら素晴らしい演技力で、『結城友奈は勇者である』に通づる強い力を垣間見た。同チームの『かみちゅ!』を観ることを決めさせた一作。ジュブナイルSFとしてこれを観ないことは人生における損失になるので必見である。
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③タグ・リーマン監督『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)
桜坂洋による原作小説を上手くアレンジし、トム・クルーズ主演によるハリウッドクオリティに耐える良作SFアクションに仕上がっている。原作小説とは違い、新兵とヘタレ広報官という主人公ケイジの設定やストーリー自体をアレンジしているが、原作とはまた異なる終結へと導き、かつアクションが凄まじく、昨年公開の『パシフィック・リム』に匹敵する面白さであった。
映画化発表以前、2011年頃に原作を読み桜坂洋という才能に気付いていたが、原作の良さとはまた違う良さを産み出した感じがある。しかし、グリーンティーのくだりが消失しているのは日本人から米国人に変更された、からだと思われるので仕方がないのだろうか……。桜坂作品の映像化は『よくわかる現代魔法』以来二作目になるが、このまま『さいたまチェーンソー少女』や『キャラクターズ』もお願いしたい次第である。映像化第一報の際に『ドラゴンボールエボリューション』の二の舞にならないか危惧していたが杞憂に終わり、何よりだ。
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④三島有紀子監督『しあわせのパン』(2011)
監督によるノベライズを三年前に読んではいて、凄くほっこりした記憶があって、原田知世・大泉洋主演ということが頭の片隅に残っていたんですが、ようやく観ました。北海道は洞爺湖のほとりにあるカフェマーニを舞台に、そこを訪れる客と原田大泉演じる夫妻の交流を軸に心あったまる話が繰り広げられる作品で、ドキュメンタリーから演出家に転身した三島監督ならではの描き方でした。
『水曜どうでしょう』で形作られた大泉洋の素を感じさせない爽やかかつ一途な男と、都会に疲れを感じて笑顔を無理矢理作る社会に嫌気がさした女が原田知世により上手く演じられていて、二人の演技力に脱帽させられました。余談ですが、オフィスキュー製作なので、いつ他のTEAM NACSメンバーが出てくるかと期待していたんですが、出てきたらギャグになってしまいそうなのでこれで正解でした。これはノベライズの前に観ておくべきだったのかもしれない一作。『思い出のマーニー』に似た感情を抱かせてくれました。
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⑤牧原亮太郎監督『ハル』(2013)
『Q10』の木皿泉脚本作品、ということで事前にノベライズ版を読んでいたのだが、そちらにはない『アオハライド』の咲坂伊緒原案による緻密なキャラクター、近未来の京都という古くから続く文化と未来ガジェットが融合した街が見事にリンクして繊細な物語が紡がれていた。叙述トリックを上手く用いてきていて(それ故にストーリーの多くを語れないのだけれど)、「やられた!」となるのだが、全て伏線の上に成り立っていることも素晴らしく、これを成せるのは木皿と、それを世界として構築出来るWIT STUDIOしかいないだろうし、この物語には咲坂の絵が必要な要素だった。全てに無駄がないし、60分尺の中編映画として完璧な作品になっていた。
牧原監督はこれが初監督作品だが、それを思わせない作りで、次回作『屍者の帝国』も期待せざるを得ない。ハルとくるみの交流を経て、ハルが心を開いてゆく様が描かれる一作だが、それに終始せず、京都に住まう爺さん婆さんの生き生きした姿も描かれて、生死について問いている面も。病気で後遺症を持った木皿(夫)の経験もあるのかもしれないが、そこを深く掘り下げた内容で、前田敦子・佐藤健によって演じられた『Q10』は未見なのだが、それに繋がる内容としてはそちらにも興味を抱いた。要するに日笠陽子・細谷佳正は前田敦子・佐藤健になるわけなのだが、この二人は『妖狐×僕SS』の共演が記憶に新しく、今作も掛け合いが素晴らしかった。是非木皿×WITの新作を観たいものだ。
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⑥藤原佳幸監督『GJ部@』(2014)
真央たちが卒業してからのGJ部員たち六人の心情を描いた作品、とはいえ最後は真央とキョロに行き着くのですがそこは仕方がない。番宣ではニューヨークに行く、ということが大々的に取り上げられていたのですがニューヨークである必要は無く、理由付けもGJ部らしいといえばGJ部らしいグダグダっぷり。森さんパワーで解決はしますし、もともと日常系作品が部室の外の描写に終始し始めたら終わりなので、ニューヨークに行っても相変わらず部室で駄弁る彼女らは観ていて和みました。
後半の、卒業後の彼女らの関係に焦点を当てるパートはやや蛇足感がありましたが、これで終わりなんだなぁ、という感覚が伝わってくる憎い演出でした。挿入歌はずるい。とはいえ、まだ中等部はアニメ化されていませんので、そちらを含めて真の完結だと思っています。まだ諦めてないんだからね。……今作の恵ちゃんは地味にキョロにアピールしていた気がするのは恵ちゃんが好きだからでしょうか。私、気になります。
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⑦吉浦康裕監督『アルモニ』(2014)
アニメミライ2014参加作品で、『イヴの時間』『サカサマのパテマ』の吉浦作品ということで手に取る。
「共通のセカイって必要じゃん?」。自意識と必死な繋がりを求めコーコーセー。「セカイが視えた」音楽と脳裏に焼きつく架空のミュージックビデオ=夢の歌。主人公の冴えないオタクと、高校デビューに成功したヒロインは実は同じ音楽を耳にしたとき同じ夢=映像が映る。クラス内ヒエラルキーの違う人間たちのなかで、「きみとぼく」だけが同じセカイを共有したかった。「すごく不思議で、まだ触れたい」そのセカイを共有することで繋がっていける。
正直25分尺では早足もいいところなストーリーなのだけれども、クラス内と夢の内容という二つの内輪を巡る物語なのであまり詳しい描写は必要ないのかもしれない。必要なものは主人公とヒロインにとっての「セカイの共有」であって「他者の理解」ではないからだ。これまでの作品も世界説明を最小限に抑えてきただけに頷ける。
また、本作は広義の意味でのセカイ系で、世界とか大きいものしまゃなくて友達関係とかクラス内ヒエラルキーの崩壊というコーコーセーにとってのセカイを描ききっていて、素晴らしかった。
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コトバでセカイをブチ壊せ!――『学校のカイダン』第1話
(注:『学校のカイダン』第1話の内容に触れています。もし未見の方は公式サイトで第1話が配信されておりますので是非ご覧ください)
スクールカーストとは何か。クラス内ヒエラルキーとは何か。それは学生の住まう小さなセカイ=学校を支配するセカイだ。少なくともそのセカイを卒業するまでの期間はその柵からは離れられない。いくら苦しくても、辛くても、そのセカイから離れることはほぼ不可能だ。中退?そんなことは自らの負けを認めたも同然、この先生きる人生ずっとその二文字が追いかける。そんなことが出来ないから、そのセカイから飛び出す方法は一つ――自殺しか無くなる。
そういう意味では学生が自殺するケースは全てスクールカーストが為したものだ。いじめ、差別、冷たい空気、暴力、精神的苦痛、見えない空気。色々なものに縛られて雁字搦めの小さなセカイで生活する少年少女たちは親にも友達にも何も相談が出来ず、そのままこの世から消えざるを得なくなる。
本作の主人公・春菜ツバメもその一歩手前、スクールカーストによって精神を蝕まれている少女だ。もちろん、スクールカーストに立ち向かう勇気・根性・精神力はもう持ち合わせていない。だから、運命を天に任せて、ただ荒波に身を預けている状態だった。しかし、雫井慧という謎の少年によって自らがそのセカイに革命をもたらすこととなる。覚悟を持って、同じ境遇だが今セカイから消されようとしている少年・油森哲夫を救おうとする。しかし、その道のりは平たんではない。今までスクールカーストに抗おうとした試しがあっただろうか?抗ったら次に消されるのは自分じゃないのか?自分が標的になりたくない、だから自分は抗おうとしない。つまり行動を起こさない。はい、終了。それで良いのか?とツバメは自問自答し、「退学届」というカクゴを持って自らのコトバでセカイに風穴を開けようとする。結果的に、油森哲夫を救うが、セカイの空気を変えることには成功しない、という展開で第1話は閉じた。
それもそのはずだ、1回の演説で180度セカイの空気が変わった試しがあっただろうか?いや、ない。リンカーンもキング牧師も誰でもそんなことは成しえなかった。徐々に徐々に空気を変えて、最終的に翻したに過ぎないのだ。
本作で描かれるセカイはアニメ的セリフなど文脈は所謂オタク的文化寄りのものだ。しかし、それはそのセカイをドラマというリアルな世界では未だ展開されていないからそちらの文脈としか思えないだけではないだろうか。アニメでは『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』や『AURA ~魔竜院光牙最後の戦い~』、現在放送中の『暗殺教室』などでスクールカーストについて描いてきた。だがドラマではどうだろう。本作と同じく土曜9時枠で放送された『野ブタをプロデュース。』くらいではないだろうか?
その理由は単純に「感情移入出来ないから」だろう。当たり前だ、土曜9時のテレビドラマを観る層は俳優女優目当てのカースト上位の皆様方が多い。そんな皆様方にはカースト下位の僕たちの気持ちなんて理解できない、理解できるのは作中で描かれるプラチナ8の皆様方の方だ、そうだ違うか!?
だが、本作には『野ブタ。』とは全く違う点がある。それはカースト上位の皆様方が下位の僕たちに肩入れしようとしないことだ。『野ブタ。』ではカースト上位に位置する二人――桐谷修二と草野彰がカースト下位に位置する小谷信子をプロデュースし居場所を確立させようとする。しかし本作はツバメが慧に助けられながらも自らのコトバだけで風穴を開こうとする。
そういった観点ではこの枠でスクールカーストをカースト下位の立場から描くのは初めてだろう。それ故に本作は従来の視聴層からは理解がされないだろうし、感情移入は出来ない、なぜならこんな経験をした試しが無いのだから。もしカースト上位にいても共感が出来るという人がいたらそれは覚悟が無くカースト上位の皆様方と同じ表情を浮かべいじめに加担しているのっぺらぼうだ。そこに自分はない。何者だお前は。自我を出せ!ツバメのように立ち上がれ!
さぁ、コトバでセカイを革命する瞬間が来た。僕らのコトバは、武器だ。